今日は待ちに待った細田守監督の最新作『果てしなきスカーレット』の公開日なので、早速観てきました。
先に結論を言うと、「挑戦的で美しく、しかし観る側の理解力を試す作品」で、ハマる人には深く刺さり、そうでない人には消化不良になるタイプの映画かな?という印象です。(私は消化不良の方でした・・・)
前作『竜とそばかすの姫』は「美女と野獣」をベースにしていましたが、今作のベースはシェイクスピアの「ハムレット」がベースになっています。
「ハムレット」の原作をすべて読まなくても良いですが、あらすじなどは頭に入れておいた方が良いかもしれません。(スカーレットの母親のガートルードが、いきなり叔父の奥さんになっていて驚きました。そんなことアリなの?って)
ただ、設定やキャラクターは大きく改変されている(主人公がハムレットではなくスカーレット、オフィーリアが登場しないなど)ため、「ハムレットを読んでないと分からない部分があるけど、読んでいても混乱する」という複雑さが正直あります。
この記事では、あらすじ、声優、映像・音響、感想などについてまとめていきます。
『果てしなきスカーレット』あらすじ
舞台は15世紀のヨーロッパ。
デンマーク王女のスカーレットは、父を殺して王位を奪った叔父・クローディアスへの復讐を試みるが失敗し、死者が送られる「死者の国」で目を覚ます。
父の敵であるクローディアスもこの「死者の国」に居ることを知り、スカーレットは復讐を果たすため、クローディアス探し始める。
その旅の途中でスカーレットは、現代の日本からやってきた看護師・聖(ひじり)と出会い共に旅することになる。
最初は反発していたスカーレットだったが、敵味方に関わらず誰とでも優しく接する聖の温かい人柄に触れるにつれ、スカーレットの心にも徐々に変化が現れる。
その頃クローディアスは、誰もが夢見る理想の地「見果てぬ場所」への行き方を発見し、そこへ行きたい民衆を操り、思いのままに支配していた。
スカーレットと聖もクローディアスを見つけるために「見果てぬ場所」を目指し、ついにクローディアスを追い詰めたのだった。
声優について
芦田愛菜さん(スカーレット役)
芦田愛菜さんは、知的で落ち着いた役柄がぴったりだと思うので、本作では叫び声や強い感情表現が多いスカーレット役は「役柄と少しミスマッチかな?」と感じました。
ネット上でも賛否が分かれているようです。
ただ、これは細田監督が今回挑戦した「プレスコ収録」の影響が大きいのでは?と思っています。
プレスコは、「プレスコアリング(pre-scoring)」の略で、先に音声(セリフや歌など)を収録し、後からその音声に合わせて映像やアニメーションを作る制作手法です。
声優の表現に合わせて後から映像を作るため収録の時点では映像が存在せず、映像の表情や動きと声の熱量が微妙にズレることがあるため、普段のアフレコとは違った難しさが出たのかもしれません。
役所広司さん(クローディアス役)
役所広司さんの演技は、非常に良かったです。
事前に出演するのを知っていたのに、鑑賞中は「え?これ役所広司さん!?」と気づかないほど自然な演技でした。
声のイメージを完全に役に寄せていて、作中で浮くことがなく没入できました。
今回のプレスコ収録のトップバッターで、「まだ動いていないクローディアスの表情と監督の指示だけで録音した」そうですが、そんなことを感じさせない熱演でした。
さすが名優といった感じです。
映像・音響について
映像
冒頭シーンで驚いたのは、「これ実写と合成してる?」と思うほどの3D映像のリアルさです。
光の質感や水・霧の表現は、これまでの細田監督作品とは明らかにアプローチが違い、海外アニメ制作技術の影響も感じる仕上がりでした。
細田監督も「アニメの新しい映像表現の創出(ルック)」に力を入れた旨のコメントを日経エンタメ2025年12月号でしています。
ただ、日本では珍しい「プレスコ収録」に今回挑戦しているとのことで期待していたのですが、口の動きとセリフのタイミングが合っている感じがしなかったのが少し残念でした。
ディズニーアニメでは多く採用されているプレスコですが、吹き替え版ではその価値が感じられないので、今回のスカーレットで実施されると聞き、期待していました。
音響
鑑賞したのはイオンシネマだったのですが、そこの音響システム「ウルティラ(ULTILA)」が想像以上に凄かったです。
とくに地鳴りのような低音の振動がリアルで、「この没入感は映画館じゃないと味わえないな」と感じるレベルでした。
後で知ったのですが、実際に鑑賞中の12時24分頃に東京湾沖でM4.0(震度2)の地震があったらしいです。
あの揺れは音響だったのか、それとも本当に地震だったのか・・・と妙な気分になりました。
感想
『果てしなきスカーレット』は、「生と死をテーマにした復讐譚」が中心の物語で、このテーマを採用したのは「映画は時代を反映するもので、今の時代を不安に思っている人が多いから」という趣旨のことを細田監督が雑誌インタビューで答えています。
復讐は憎しみ・復讐の連鎖を呼ぶため、どこかでその連鎖を断ち切る必要がある。
なら、その連鎖を誰がどう断ち切るのか?
それには「許し」が重要で、ストーリーの中でも重要なキーワードとして使われています。
他にも「生きるとは何か?」「復讐の先には何があるのか?」といった問いかけを、抽象的なビジュアルと時間構造で表現していると思います。
ただ、そのテーマに対する「解」がストーリーやシーンに込められているはずなのですが、私の理解度が低いからか難解で、いまいち分からなかったのが残念です・・・
他にも、物語全般にかけて登場する非常に大きなドラゴンや、すべてを見通している風の「謎の老婆」が何を象徴・意味しているのかなども理解できませんでした。
ただ、スカーレットと聖の会話から「今の時代の世界を良くすれば、これから先の遠い未来は、今よりももっと良くなる。だからみんなで協力して頑張ろう!」というのは、監督のメッセージとしてあるのだろうな、とは感じました。
難解だったのは、細田監督の「世界に問いかけたい!」という意気込みから、物語よりもテーマを優先した結果なのかもしれません。
まとめ
『果てしなきスカーレット』は、細田守監督の中でも最も挑戦的で賛否が分かれやすい作品だと思います。
・圧倒的な映像技術
・音響の没入感
・「ハムレット」をベースにした重いテーマ
このあたりは確かに魅力ですが、理解が追いつかない構造や未回収の要素も多く、人によって評価が大きく変わりそうです。
ただし、「今この時代をどう生きるか」というメッセージはしっかり感じ取れる作品でした。
興味がある方は、できれば大画面&良い音響の劇場で観るのがおすすめです。
体験そのものが、この作品の大きな価値になっていると思います。



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