
『龍とカメレオン』は石山諒先生の作品で、漫画業界の現実と苦悩がリアルに描かれた漫画家によるバトルを描いた作品です。
スクウェア・エニックスの『月刊ガンガンJOKER』にて2022年11月号から連載中で、2023年には「次にくるマンガ大賞2023」のコミックス部門でU-NEXT賞を受賞、第53回「日本漫画家協会賞」では「まんが王国とっとり賞」を受賞するなど、高い評価を受けています。
私がこの作品を知ったのは最近で、「なぜこれほどの作品を今まで知らなかったのか!!!」と思ったほどの作品です。
あらすじ
大人気漫画『ドラゴン・ランド』の作者で、天才的な発想力と圧倒的な画力を誇る漫画家・花神臥龍(かしん がりゅう)と、驚異的な模倣技術から「カメレオン」の異名を持ち、花神の才能と地位を妬む無名漫画家・深山忍(みやま しのぶ)。
そんな二人がある事故をきっかけに身体が入れ替わってしまうことから物語は始まります(いわゆる入れ替わりもの)。
花神は大人気漫画家の地位を失いながらも深山の能力を生かし、新しい視点で新人漫画家としてゼロからトップへの挑戦を始め、花神の体を手に入れた深山は、その能力と地位を最大限に活用し、業界トップの地位を維持しながら花神の排除を試みる。
入れ替わった2人が繰り広げる壮絶な漫画バトルを描く作品で、漫画家たちの熾烈な競争や業界の厳しさがリアルに描かれ、才能とは何か、努力とは何かといったテーマが深く掘り下げられています。
オススメポイント
漫画家のバトル漫画といえば『バクマン』を一番に思い出しますが、『バクマン』が実際の週刊少年ジャンプを舞台に繰り広げられる(比較的)現実的なバトルに対して、『龍とカメレオン』は漫画の中からキャラが飛び出してくるなどの描写で心理面を強調した内容になっています。
漫画家が直面する生みの苦しみや孤独、物語をどう進めるかの選択や自分の判断が正しいのかどうかの悩みと自己との対話、プロ漫画家としての態度やマインドなど、実際の漫画家だからこそ描ける葛藤と心理描写が胸熱です。
そういった面からも、一般の読者の人気もさることながら、漫画家の先生達から人気がある漫画だと思います。
「そうそう、わかる。それな!」みたいな。
胸熱シーン
1)自分を信じる強い心
第2話で、喫茶店で出会った若者に「面白くなかったら原稿を破る」と言われた時に、「面白いから大丈夫だ」と花神がためらうことなく返すシーンが胸熱。
2)編集者のプライド
第2話で、花神がどんな要望も受け入れる自分の担当編集に「深山の作品を載せるな。さもないと連載を止める」と脅した時に、「作品を生かすことが編集の仕事」と断固として断った編集者のプライドが胸熱。
3)たった一人の読者のために全力を尽くす覚悟
第3話で連載打ち切りの決まった漫画家のヘルプに来た花神が、自分の作品を「こんな漫画」と卑下する漫画家に、「一人でも面白いと言ってくれた読者がいるなら、『こんな漫画』なんて作者のあんたが言っちゃいけない」と啖呵を切るシーンが胸熱。
他にも26話で、骨坂が富嶽一鬼に酷評されてメンタルがやられかけた時に「骨坂の漫画は面白い。俺の言葉を信じろ」と言うなど胸熱シーンが盛りだくさんな作品です。
タイトル | 龍とカメレオン(1) |
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表紙 | ![]() |
作者 | 石山諒 |
出版社 | スクウェア・エニックス |
発売日 | 2023年04月21日 |
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